「昨日の疲れが取れない……」という悩みをあなたは抱えていませんか?疲れが取れないことで集中力などが落ちてしまい、いい仕事ができないということはよくあります。
ビジネス書などでは、人の能力には大きな差はないと言われていますが、仕事で「結果を出せる人」と「出せない人」がいます。その大きな理由の1つに「ストレスが大きく影響している」と考えられているのです。
◎ストレスが脳と体のポテンシャルを下げている
ストレスは、脳機能の低下をもたらし、体の不調も引き起こします。ベトナム戦争から帰還した兵士たちの脳を調べてみたところ、脳の海馬という部分が萎縮していたという研究結果があります。
うつ病でも、前頭葉の血流や代謝などの脳機能の低下がみられます。また、うつ病の症状として、頭痛や腹痛、疲れが取れないなどの体の不調が起こるということは、あなたも一度は聞いたことがあるでしょう。
ここまで極端な話ではなくても、人が何かしらのストレスを受けているのは間違いありません。そのため、誰もが脳と体の機能低下を起こしている可能性があり、仕事の成果に少なからず影響している可能性が高いのです。
◎ポジティブシンキングではストレスは解消できない
ポジティブに物事を考えて、ストレスに強くなることは有効ですが、考え方を変えるためには時間がかかり、これができれば誰も苦労しません。
そのため、このような方法よりは、「生活習慣を変えてストレスを克服する」方法のほうが現実的です。ストレスの問題は、「寝る、起きる」というリズムを崩してしまうと起こるからです。
人間の体内時計は、個人差はありますが24時間よりも数十分長いことがわかっています。つまり、この数十分のズレを整えれば、「悪いストレス」が消えていき、自分の能力を最大限に引き出せるのです。
では、ここからズレていきがちな体内時計を毎朝「リセットする」し、ストレスを消す方法を見ていきましょう。
【1】ストレスを解消するスヌーズ機能の使い方
スヌーズ機能とは、アラームを一定期間繰り返し鳴らし、起床時間を先延ばしにできる機能です。1回だけのアラーム音では「寝坊してしまうかもしれない」という人にとっては、便利な機能になります。
しかし、朝のスヌーズ機能は、スッキリ起床するためには逆効果であるという研究結果が優勢です。起床するときに浅い睡眠を繰り返してしまい、眠り続けていたいという「睡眠慣性」を長引かせてしまうと考えられているからです。
自然に起きられない人は、最初のアラームで起きるか、妥協策として、スヌーズ機能を使うのは1回だけに限ることです。「スヌーズ機能を1回限定の気持ちで活用する」というのが、ストレスが消える朝の習慣の1つになります。
【2】朝シャワーで交感神経を活発にする
朝のシャワーが、目覚めにいいことはあなたもご存じでしょう。眠くてボーッとした目を覚ますには、人間にとってアクセルの働きをする交感神経を活発にさせることが、手っ取り早い方法です。
少しだけ熱めのシャワーを浴びることで、自律神経を温度の変化で目覚めさせることができます。熱めの温度がいいからといっていきなり高温にはしないで、徐々に温度を上げていくのがコツです。
冬は、朝シャワーを浴びた後、体全身が急激に冷えてしまうので、シャワーから上がる前に足首やふくらはぎに、冷たい水をかけておくのです。冷たい水によって交感神経が刺激され、血行も良くなり、朝シャワーのメリットが倍増します。
【3】柑きつ系のジュースでスッキリ目覚める
レモンやグレープフルーツ、オレンジなど柑きつ系の果物には、脳を目覚めさせる働きがあります。ビタミンCが多く、健康的な食べ物ですが、メリットはそればかりではありません。
心を落ち着かせる働きを持つGABAの作用を弱めます。車にたとえれば、ブレーキを弱めてスピードを出す、というところでしょうか。朝からブレーキを弱めて、脳のエンジンをかけたい人にはいい話です。
ホテルの朝食もジュースは定番ですし、コンビニで売っているジュースも、朝に飲むことを見込んでいます。
ジュースでいいので、眠い寝起きに酸っぱい柑きつ系ジュースを摂れば、目覚めが良くなり、体内時計も調整されます。体内時計を乱さずキープすることは、ストレスとつき合う上で大切です。
【4】通勤中に「帰宅時間」をイメージする
「さて、今日はどういう予定があったかな」「1日やることがいろいろあるな」……。通勤中は、仕事やノルマのことばかり考えてしまいがちです。
仕事優先のまじめなこの考え方は、「仕事が片づかなければ、残業してもしょうがない」という惰性につながってしまいかねません。帰りが遅くなれば、夕食も遅くなり、睡眠時間は減って、睡眠の質も落ちてしまいます。
ストレスは消えるどころかたまる一方です。朝はむしろ、しなければならないことを考えるより、「○時には、家に帰る」「◯時には、会社を出る」と、仕事の終わりをイメージする習慣をつけたほうが、1日の集中力が上がります。
朝は「早く帰りたいな」と思っていても、午後から夕方にかけて作業が進んでいけば、つい残業でもいいから遅くまで仕事をしてもいいかなと考えてしまいます。そうならないよう、夜に予定がないとしても、朝に帰宅時間を決めておきましょう。
ストレスで気が重くなる朝に、仕事を終えるイメージを持つことで、朝の重い気持ちを軽くすることがコツです。
【5】ポストイットに「今日、最も大切な仕事」をひとつだけ書く
次から次へと舞い込んでくる仕事や用事で、朝からストレスを抱えてしまう人もたくさんいます。何から手をつけていいかわからない、後でしようと思って忘れてしまうなど、仕事の管理は大変です。
仕事やスケジュールの管理で、よく用いられるのが「To Do リスト」です。とはいえ、朝にこれを作成する時間は取れない人も多いでしょう。会社に到着していきなり急用が立て込む、デスクに落ち着いている時間がないなど、朝にTo Do リストをチェックしている余裕がないという場面のほうが、むしろ多いのかもしれません。
朝からいきなり仕事の激流にのみ込まれてしまう日常が続くと、自分が何をやっているのかなど、働いている意味がわからなくなってくることがあります。人間は疲れてくると、考えがマイナスに向きがちです。
毎朝のリストの管理が面倒ならば、リストにこだわる必要はありません。「1日1項目」を朝チェックするだけでも、1日の見通しが良くなります。今日1日、何か大切なことをひとつだけ朝にチェックをします。
頭ではわかっていることですが、ポストイットにでも書いてチェックすることで、ちゃんと確認したという安心効果があります。
5つのちょっとした習慣で、ストレスが消えていき、能力は高まるのです。
※参考文献『ストレスが消える朝1分の習慣』(精神科医 西多昌規・著)